初恋のきた島——浜田省吾、江田島という原点
瀬戸内海に浮かぶ江田島。この静かな島は、ロックミュージシャン、浜田省吾さんが少年期を過ごした場所であり、彼が「初恋のきた島」と呼ぶほど、心に深く刻まれた原点です。
音楽との出会いと感性の芽生え
浜田さんが江田島に住んだのは、小学4年から中学1年までの約4年間。警察官だった父の転勤で移り住み、剣道に励む日々の中、友人宅で偶然耳にしたビートルズの音楽に衝撃を受けました。彼はこの体験を「音楽の世界があると気づいた瞬間」と語り、後のアーティスト人生の出発点となったのです。
山田バス停——記憶の象徴から聖地へ
浜田さんがかつて利用していた「山田バス停」は、ファンクラブ会報誌に掲載された“浜省ポーズ”の写真で知られています。サングラスをかけてベンチに座り、通り過ぎる小学生を眺めるその姿は、過去の自分と向き合うような静かな時間を感じさせます。
このバス停は老朽化により2012年に取り壊される予定でしたが、地元の中学生たちの声により、ベンチと建物の一部が江田島図書館の敷地に移設されました。さらに2023年には市が約160万円をかけて、当時の姿を忠実に再現。停留所の案内板や広告看板まで設置され、ファンが“浜省になりきって”撮影できるよう工夫されています。
ファンの熱意と地域の協力
江田島図書館には「ON THE ROAD 江田島」コーナーが設けられ、浜田さんの写真や資料が展示されています。2024年には展示スペースが拡張され、全国のファンから寄贈されたポスターや雑誌などが並び、まるで小さな浜省ミュージアムのような空間に。
さらに、図書館の中庭には新設された展示室があり、来館者が自由に記念写真を撮れるベンチや、寄せ書きノートも設置されています。2025年には「初恋記念日イベント」も開催され、音楽会や資料展示で大いに盛り上がりました。
江田島が育んだ“浜省らしさ”
浜田さんは、父と登った古鷹山や、瀬戸内海で泳いだ思い出、カキ筏で足を切ったエピソードなど、江田島での体験を鮮やかに語っています。これらの記憶は、彼の歌詞ににじみ出る情景描写や、孤独と希望が交差する世界観に深く影響を与えているように感じられます。
地元のお好み焼き店「高田」も、浜田さんの青春の味として知られ、現在は「だいだい」という店名で営業中。ファンが集い、彼の音楽と記憶を共有する場所となっています。
“初恋のきた島”が今も息づく理由
江田島は、浜田省吾さんにとって音楽の原点であり、人間としての芯を育んだ場所です。彼が「初恋のきた島」と呼ぶその言葉には、音楽への目覚め、人との出会い、心の揺らぎが詰まっています。
そして今、江田島はファンの熱意と地域の協力によって、浜田省吾という存在を感じられる“聖地”として進化を続けています。この島を訪れることは、彼の楽曲の奥に流れる温もりや切なさに触れる旅であり、浜田省吾という“魂”に寄り添う体験なのです。
まとめ
浜田省吾さんが少年期を過ごした江田島は、彼の感性と音楽の原点となった特別な場所です。小学4年から中学1年までの4年間、この島で剣道に励み、ビートルズとの衝撃的な出会いを経験したことで、音楽という人生の扉が開かれました。
なかでも「山田バス停」は浜田さんの青春の象徴。通学路だったこの場所は、ファンクラブ誌に掲載された“浜省ポーズ”でも有名で、現在では図書館敷地内に再現されファンの聖地となっています。
江田島図書館では「ON THE ROAD 江田島」コーナーが設置されており、浜田さんの少年時代を知る資料が展示され、地域の中学生や市の取り組みで聖地化が進みました。鷲部小学校跡地や地元の味を継承するお好み焼き店「だいだい」も、彼の記憶をつなぐ大切な場として知られています。
古鷹山や瀬戸内海での自然体験は、彼の歌詞ににじむ風景となり、浜田さんの人間味ある音楽性を支える要素となっています。
江田島は今も「初恋のきた島」として、浜田省吾の魂を感じることができる場所。彼の音楽を愛する人々にとって、そこはただの島ではなく、“自分自身と出会う旅の入り口”なのです。