スバルのCMを観ていて、ふとこう思ったことはないだろうか。
「車のCMなのに、曲のほうに心を持っていかれた」と。
とくに
MISIA の「アイノカタチ」が流れたレヴォーグのCM。
気づけば車のスペックよりも、歌声に涙した、という声が続出した。
でも実は、それこそがスバルの狙いだ。
スバルは、音楽を“BGM”として使わない。
物語の一部として、ブランドのメッセージそのものを託す。
「移動とは、ただの移動ではない。
そこには感情も、記憶も、大切な人も乗っている」
その思想を、音楽で語る。
この記事では、MISIAを起点に、
コブクロ、
BUMP OF CHICKEN の3組とのタイアップから、スバルの“選曲哲学”を読み解いていく。
MISIAが証明した「移動の感動」
MISIA × LEVORG
「アイノカタチ – So Special Ver. –」
(2020年 レヴォーグCM)
2018年リリースの「アイノカタチ」は、すでに社会に浸透していた名曲だった。
レコード大賞最優秀歌唱賞も受賞し、代表曲のひとつとして確立されていた。
普通なら「ヒット曲を使いました」で終わる。
だがスバルは違った。
CMのために新録バージョンを制作。
しかもその音源は、CMで“世界初解禁”。
つまり、
CMが楽曲発表の場になったのだ。
これは片側だけが得をする広告ではない。
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アーティスト:新録バージョンを大規模に届けられる
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スバル:初解禁というニュース性を獲得できる
対等なコラボレーション。
結果はどうだったか。
「車よりMISIAが印象に残った」
そんな声が続出した。
しかし逆に言えば、それほど心を揺さぶられたということ。
“移動を感動に変えるクルマ”というコンセプトを、
体験として証明してしまった瞬間だった。
12年越しの再起用——コブクロという“記憶”
コブクロ × LEVORG
「君という名の翼」
(2018年 レヴォーグCM)
2006年リリースの楽曲が、12年後にCMへ。
なぜ今さら?
答えはシンプルだ。
テーマが、ぴったり重なっていたから。
「君という名の翼」は、
“共に走る”歌だ。
レヴォーグのキャッチコピーは、
「人生を走ろう。」
偶然とは思えない一致。
さらにもう一つ。
レヴォーグの主要ターゲットは30〜40代。
つまり2000年代中盤に青春を過ごした世代。
当時リアルタイムで聴いていた曲が、
家族を持った今、車のCMで流れる。
これは単なる懐メロ起用ではない。
記憶とブランドを結びつける戦略だ。
音楽は、時間を連れてくる。
スバルはそこを計算している。
「昴」と「天体観測」という必然
BUMP OF CHICKEN × CROSSTREK
「天体観測 – 2022 Rerecording Version –」
(2022年 クロストレックCM)
ここまでくると、もはや物語だ。
スバルのブランド名「SUBARU」は、
プレアデス星団——日本語で「昴」に由来する。
ロゴにも6つの星。
一方で「天体観測」は、
「見えないモノを見ようとして」から始まる、
星と宇宙と好奇心の歌。
星のブランドと、星の歌。
これ以上ない必然だ。
しかもここでも、新録バージョン先行解禁。
既存曲をただ借りるのではなく、
“新しい物語”として世に出す。
クロストレックのコンセプトは
都会もアウトドアも走れる多用途性。
好奇心と冒険心。
それはまさに「天体観測」の精神と重なる。
21年越しで、星の曲が星のブランドに辿り着いた。
偶然のようで、あまりにも美しい伏線回収だ。
3組から見えてくる、スバルの選曲哲学
3つの共通点がある。
① 歌詞とコンセプトが深く一致している
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愛(MISIA)
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共に走る(コブクロ)
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好奇心(BUMP OF CHICKEN)
どれも車のスペックではなく、
“生き方”に寄り添うテーマ。
② ターゲット世代の青春とリンク
音楽は、世代の記憶装置だ。
その世代が一番感受性の強かった時期の曲を選ぶ。
感情が動けば、ブランドは忘れられない。
③ 新録・初解禁という対等設計
CMは広告でありながら、
楽曲の“発表の舞台”にもなる。
ここに長期的な信頼関係が生まれる。
その曲でなければならない理由
スバルのCM音楽に共通するのは、
必ず「その曲でなければならない理由」があること。
人気だからではない。
流行っているからでもない。
車の物語と、
歌の物語が、重なるから。
だからスバルのCMは、
“うるさい広告”ではなく、
一本の短編映画のように記憶に残る。
音楽をBGMにしない。
物語として選ぶ。
そこに、スバルというブランドの芯がある。

