８月のこの時期、浜田省吾の『花火』をきくと、この曲の意味は何だろうと、ずっと思っていたのっで、良い機会なので深堀してみたいと思います。
花火 歌詞https://www.uta-net.com/song/51513/
夏の夜空に咲く一瞬の光。
それは、過ぎ去った時間の記憶であり、戻れない場所への想いでもある。
浜田省吾の『花火』は、そんな儚くも深い感情を、静かに語りかけてくる。
この曲に描かれるのは、家族を思いながらも距離を置いてしまった男の、5度目の夏の夜。
彼の視線の先にある花火は、何を映し出しているのだろうか
浜田省吾の『花火』は、夏の夜空に打ち上げられる花火を背景に、ある男性が家族との過去を静かに振り返る物語です。歌詞に込められた言葉は、後悔、愛情、そして時間の流れを繊細に描き出しています。
🔍 歌詞から読み解く人物像
主人公は、かつて家族と暮らしていた男性。仕事のためか、ある事情で家を離れ、「すぐに帰るつもりだった」と繰り返し語ります。しかし、気づけば5度目の夏が過ぎていた。
「すぐに帰るつもりで車を車庫から出して アクセル踏み込んだ
もう5度目の夏の夜空に花火」
このフレーズは、彼の「帰れなかった理由」よりも、「帰りたいという気持ち」と「時間の残酷さ」に焦点を当てています。
🧭 家族との距離と、変わっていく日常
歌詞には、家族の成長が描かれています。
- 娘は成人し、息子は高校進学を控えている
- 「暮らしには困らぬように稼ぎはすべて送った」という責任感
彼は家族を思いながらも、物理的にも心理的にも距離ができてしまったことを痛感しています。花火は、かつて一緒に見た夏の象徴であり、今は遠くから眺めるだけの存在になってしまった。
🌌 花火の象徴性：過ぎ去った時間と、取り戻せない瞬間
花火は一瞬で消える美しさと、儚さの象徴です。彼にとって花火は、家族と過ごした日々の記憶であり、今はもう戻れない時間を象徴しています。
「見上げれば 涙で滲んだ夏の夜空に花火」
この一節は、彼の感情のピークを表しており、後悔と愛情が交錯する瞬間です。
「君の心 失っても 隠せない」— 愛の残響と、届かぬ想い
このフレーズは、主人公がかつて愛した人との関係がすでに終わってしまったことを示唆しています。
「君の心を失った」とは、彼女の気持ちがもう自分には向いていない、あるいは別の人生を歩み始めたことを意味しているのでしょう。
しかし、それでも「隠せない」と続くことで、彼の中に残る感情が抑えきれないほど強く、今もなお彼女への想いが心の奥に残っていることが伝わってきます。
この一節には、以下のような感情が込められていると考えられます：
- 後悔：自分の選択が、彼女の心を遠ざけてしまったという痛み
- 誠実さ：失ってもなお、偽ることなくその想いを抱き続けている姿勢
- 未練と愛情：終わった関係の中に、まだ確かに残る愛の痕跡
このフレーズが登場するのは、物語の終盤。つまり、主人公がすべてを振り返ったうえで、最後に残った感情がこの「隠せない想い」なのです。
おわりに：浜田省吾が描く「喪失と愛」
『花火』に描かれるのは、特別な出来事ではない。
それは、誰かの人生の一場面であり、誰もが経験する「時間の流れ」と「取り戻せない瞬間」だ。
主人公は、家族を思いながらも、戻ることができなかった。
けれど、その想いは、夏の夜空に打ち上げられた花火のように、確かにそこに存在していた。
浜田省吾は、派手な演出ではなく、静かな語り口で「人生の余韻」を描く。
『花火』は、聴く人それぞれの記憶と重なり、異なる物語として響いていく。
この曲を聴くたびに、私たちは「帰れなかった夏」と「今ここにある想い」を、そっと見つめ直すのかもしれない
