2015年に公開された映画『アゲイン 28年目の甲子園』は、かつて高校球児だった男たちが、再び甲子園を目指すという感動の物語だ。主演の中井貴一が演じる主人公は、過去の後悔と向き合いながら、息子との絆を取り戻していく。
この映画の主題歌として、浜田省吾が10年ぶりに書き下ろしたのが「夢のつづき」だ。彼自身が“父親”という立場から紡いだこの楽曲は、映画のテーマと見事に重なり合い、観る者の心に深く染み渡る。
歌詞は、父親が息子や娘の成長を見守る視点で描かれている。
君が投げ返してくるボール 日毎速くなり
今ではオレより背も高くて 何だか眩しい
この一節には、子どもの成長への驚きと誇らしさ、そして少しの寂しさが込められている。父親としての視点から、子どもたちの未来を祈る姿が、静かに、しかし力強く描かれている。
空高く飛び立ってく娘
美しく翼ひろげる君の幸せ 深く祈ってる
娘の旅立ちを見送る父の姿は、まるで浜田省吾自身が語りかけているようだ。彼の歌詞には、過剰な感情表現はない。けれど、だからこそ、聴く者の心に寄り添う。
映画の中で、かつての夢をもう一度追いかける男たちの姿は、浜田省吾の音楽と重なる。彼が歌う「夢のつづき」は、過去を否定するのではなく、受け入れたうえで、もう一度前を向こうとする人々への応援歌だ。
いつか遠く憧れてた場所
どこか遠く陽のあふれる場所へ出かけよう
二人で そっと あの頃の夢をたどって
このラストのフレーズは、映画のラストシーンと見事に重なり合う。甲子園という夢の舞台を目指す男たちの姿と、家族の再生の物語が、浜田省吾の歌声に包まれて幕を閉じる。
「夢のつづき」は、浜田省吾が父として、男として、そして音楽家として紡いだ人生の歌だ。それは、夢が終わるのではなく、続いていくことを信じる者への賛歌でもある。
映画と音楽が交差する瞬間、私たちは自分自身の“夢のつづき”を思い出す。それは、過去の延長線ではなく、今この瞬間から始まる新しい物語なのだ
「アゲイン 28年目の甲子園」が描く、父と娘、仲間と夢の再生
映画の背景とあらすじ
- 原作:重松清、監督:大森寿美男、主演:中井貴一
- かつて甲子園を目指した高校球児たちが、28年の時を経て「マスターズ甲子園」に挑戦
- 主人公・坂町晴彦(中井貴一)は、仕事にも張りがなく、娘とも絶縁状態
- 亡き親友の娘・美枝(波瑠)が現れ、父の遺志を継ぎ、仲間を再び集める旅が始まる
2. 映画のテーマと構造
- 🧩【再生と赦し】
過去の暴力事件で甲子園を辞退した苦い記憶。仲間たちはそれぞれの人生を歩みながらも、心に残る“未完の夢”を抱えている。 - 👨👧【父と娘の物語】
主人公と娘の関係修復が物語の軸。離婚や絶縁を経て、キャッチボールを通じて再び心を通わせていく。 - 🧑🤝🧑【友情と絆】
かつての仲間たちが再び集まり、年齢や体力の限界を超えて甲子園を目指す姿は青春そのものの。 - 浜田省吾の「夢のつづき」は、まさにこの映画の魂を音楽で包み込む存在だ。父親の視点から語られる歌詞は、映画の父と娘の物語と重なり、観る者の心に深く響く。
「空高く飛び立ってく娘 美しく翼ひろげる君の幸せ 深く祈ってる」この一節は、映画のラストで娘が父の背中を押す瞬間と見事にリンクする。音楽と映像が一体となり、“夢の続き”を生きる勇気を私たちに与えてくれる。 - まとめ
- 28年の時を超えて、再び甲子園を目指す男たちの姿は、誰にでもある“置き去りにした夢”を呼び起こす。
そしてその夢は、浜田省吾の歌声とともに、静かに、力強く、私たちの胸に灯る。